ナイロックはなぜ緩まない?

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Nylok screw

皆さま、こんにちは!今回は世界が認める戻り止めねじの決定版!「ナイロック」を紹介したいと思います。ナイロックとは、ねじ部にナイロンを塗布し強力な緩み止め効果を発揮させる技術です。

    緩み止めねじは他にも様々なものがありますが、ナイロックは雄ねじ、雌ねじいずれでも加工できることや繰り返し使えるなど非常にユニークな部分があり、またナイロックの戻り止め原理を知ることでねじの締結に関して深く勉強になるので今回書かせていただきました。



動画はこちらです!

 

 

ナイロックとは


強力な戻り止めねじ
   ナイロックが戻り止めねじとして素晴らしいことは、その実績が証明しています。まずNASAの人工衛星。打ち上げられて宇宙空間に出るまでには非常に大きな振動が掛かりますが、その振動にも耐えねじをしっかりと締結しています。また日本の新幹線には、先頭車両のワイパー、ドア部品、窓枠を止めるねじ、線路を止める杭、その他架線など多くの箇所で使われています。

    新幹線は300キロを超えるスピードで多くの人を運びます、当然凄まじい振動があり且つ絶対に緩んではいけませんが、今まで新幹線についているワイパーが飛んだとかドアのねじが緩んでいるというニュースを聞いたことがありません。

   その他、自動車部品、建設機械、産業機械、建築部品、スノーボード、自転車など多くの業界でナイロックは採用されています。このように振動の大きい、またねじが緩んでしまっては大事故につながるような重要箇所にもナイロックが長年採用され実績があることを見てもナイロックの緩み止め効果の強さが分かります。



繰り返し使える緩み止めねじ


    ナイロックの最大の特徴は、繰り返し使える緩み止めねじということです。「緩み止めねじ」というものは、ねじを締めこんだ後、戻しトルク(緩めるときのトルク)を計測し、ある一定以上の値でなければならないとISO規格などで決められています。


    図2を見ていただきますと、ナイロックは1回目の戻しトルク、2回目の戻しトルク、3回目・・・と計測すると戻しトルクが低下していますが、7回目くらいからおよそ一定の数値が計測されているのが分かります。

1回目、2回目と値が下がっていくのはどうしてもナイロックはナイロンで出来ているのでナイロックがねじ部、つまり金属に押されて馴染んでしまっているためです。ただ、この数値というのはその下にあるISOが決めている最低戻しトルクに比べて圧倒的に高いところでキープしています。つまり、繰り返し使っても緩み止めねじとして効果を抜群に発揮した状態を保っているということです。



※泰洋産工株式会社様より資料提供

 
どんなねじにもナイロックできる
もうひとつの特徴は、ナイロックは様々なねじに加工することが出来るということです。

    緩み止めねじ製品というのはナットやワッシャーなどに細工を施すことが多いのですが、ナイロックは雄ねじでも雌ねじでも加工することが出来ます。またキャップボルトや止めネジ、小ねじ、六角ボルトなどの一般規格品に加工することが可能なのはもちろんですが、カスタマイズで作った加工品であっても加工することが出来ます。また形状にもよりますがM1の微細なねじから、M24などの大きなものまで加工できます。

    あと鉄、ステンレス、SCM435などの合金鋼であっても加工することが可能です。ただ、真鍮など一部加工しにくいものもありますのでご相談いただけたらと思います。

 
★ナイロックの戻り止めの原理


★ねじはなぜ締まり、なぜ緩むのか?


    人工衛星や新幹線でも抜群の効果を発揮するナイロックですが、お客様にもよく「ちょこっとペンキ塗ってるだけちゃうん?」と言われるくらい見た目にシンプルなものです。では、どうやってそんな素晴らしい緩み止めの力を発揮するのでしょうか?

    それを知っていただくためには、まず「ねじはなぜ締まるのか?」また逆に「ねじはなぜ緩んでしまうのか?」ということを知る必要があります。なぜならナイロックを含むあらゆる緩み止め製品は、そのねじの締結の原理を利用しているからです。締結の原理を研究し、その原理となる力を最大限に生かす或いはキープすることを工夫しているのが緩み止めねじなんです。

 
    ねじというものは締めこんでいったときに発生する軸力と摩擦力で締結した状態をキープできるようになっています。ねじは締めこんでいくと雄ねじと雌ねじの座面が接地したところからねじ部が引っ張られて伸びていきます。

    その瞬間から引っ張られたねじが元に戻ろうとする力、つまり軸力が発生しています。この軸力が発生することで、雄ねじと雌ねじの接地面(座面、ねじ部)で摩擦力が発生し、ねじが締結できるんです。

(詳しくは、以前のブログを読んでいただけたらと思います)

    では逆になぜねじは緩んでしまう時があるのか?ということですが、それはその軸力と摩擦力が落ちる瞬間があるからなんです。雄ねじと雌ねじの間にはある程度の隙間が必ず存在します。隙間がないと嵌合(かんごう)できない、挿入できないからです。ただねじ締結後、振動や揺れ、衝撃があるとその隙間があるのでどうしても軸力が低下する瞬間が出てきます。

    そうすると軸力が低下、摩擦力が下がり緩んでしまうのです。もちろん他にも色んな緩みの原因はありますが、結局は軸力と摩擦力が低下した時にねじは緩んでしまうのです。


ナイロックの締結の原理


    ほぼすべての緩み止めねじと言われるものは、この「軸力」もしくは「摩擦力」が締結にとっていかに素晴らしい状態でキープするのか?を深く追求して考え出されたものです。スプリングワッシャーや平ワッシャー、またフランジのついたものなどあらゆる緩み止めねじはそうです。

    ナイロックの場合は摩擦力をいかに上げ、キープし続けるかを追求し、且つ出来るだけ簡単に施工できるように考え抜かれた技術です。

ナイロックは下記の図のように全周に加工せず、90度以上あるいは半周程度の加工とするのが基本でこれには理由があります。



    ナイロックがついたねじを締め付けていくと嵌合(かんごう)したところから、非常に硬くなり手では締められないくらいになります。それでもドライバーやレンチ、スパナなどの工具を使うと締め付けていくことが出来ますが、その時に何が起こっているかというとナイロックはナイロンなので金属より柔らかく、ねじ部に沿って凹んでいきます。凹むので締めこんでいけるのですが、一旦凹んだナイロックは元に戻ろうという軸直角方向の力が発生しています。

    ゴムボールを手でグッと縮めると反発して手に大きな力が返ってくるのと同じような感じです。その力が、雄ねじと雌ねじの隙間で発生します。そうするとナイロックが付いていない逆の方向にねじが押される力が働き、金属と金属の接地面に発生していた軸直角方向の摩擦力が発生して戻り止め効果を発揮しているのです。

 
    またナイロックがあることにより元々あった雄ねじと雌ねじの間の隙間も小さくなり振動や揺れがあっても戻る方向に進みにくくなるという効果が発揮されるのです。(参考までに軸直角方向の摩擦力は一般ねじ・接着剤タイプの戻り止めネジのネジ締結では発生していません)

 



    またナイロックは、ナイロックが付いていない普通のねじの時と同じ施工で済みます。ワッシャーを新たに入れる、もしくは2個ナットを締めるということもしなくてもよく、また締付トルクについても今まで通りの値で締めこんでいただくだけで緩み止め効果は抜群に高まります。

ナイロック商品紹介
ここからは、阪神ネジの宣伝になります!(笑)

    ナイロック加工は工場の方で塗布してからお客様に供給させていただく形になります。1回の加工に一式の加工賃が掛かりますのでどうしても1本とか数本で作ると単価が高くなるパターンとなります。ですが!阪神ネジでは多くのお客様が汎用的にお使いいただけるような規格を作っており、あらかじめナイロック加工した商品を在庫販売しております。在庫品としては六角穴付きボルト、六角穴付き皿ボルト、六角穴付き止めネジ、六角ボルト、ステンレス小ねじ(なべ、皿、トラス)、ナット等を中心に在庫しております。

1本から供給させていただきますので、ご興味ありましたらお気軽にご連絡くださいませ。

※鉄道車両用、原子力発電所向けなど重要保安箇所でのご使用を検討される場合は必ずその旨お伝えください。

まとめ
    長文になり大変失礼いたしました。ナイロックは戻り止め効果も高く、様々なねじに加工ができ、また施工もシンプルという本当に素晴らしいものです。もし、ねじの緩みなどでお困りのことがありましたらご遠慮なくお申し付けくださいませ。