水素脆性について 後編

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水素脆性について 後編

前回のコラムにて水素脆性とは?遅れ破壊とは?ということを書かせていただきましたが、ではどうして水素が鋼の中に入ると素材が脆(もろ)くなってしまうのか?というところを今回書きたいと思います。

 


水素脆性のメカニズムは実は解明されていません!
こんなコラムにしておきながらなんでやねん!という感じですが、まだ水素が鋼の中に入るとなぜ脆くなるのかというメカニズムはある程度これだろうという説がありますが本質的に解明されているわけではありません。

    理由は、鉄などの金属の原子サイズに比べて水素がめちゃくちゃ小さい元素で、自由にその中を動けてしまい水素検出が難しいのです。また水素脆性は時間・温度・応力状態・ひずみ・材料強度など多くの要因が絡み解明を難しくしていると言います。

説① 高圧水素ガス説
    鋼の中のほんの小さな隙間に水素原子が集まり、水素分子となりその隙間に圧力をかけるような状態となってその隙間を大きくしてしまうというもの。



説② 原子間結合力低下説
    一生懸命、鉄原子同士がくっついて引張強さを保っている中に水素原子が入り込んで、鉄同士の結合力を低下させ割れ、破断を容易にするというもの。



 

    他にも水素吸着説などもありますが、上記の理由から完全に解明されてはおりません。ただ、水素が原因で鋼を脆くしているということだけは確かなようなのでベーキング処理をして水素を抜けば鋼の力が元に戻るということのようです。

まとめ
    水素脆性が引き起こす遅れ破壊はモノづくりにとっては非常に恐ろしい現象です。ただ、高強度仕様のボルトにメッキをするのであれば強度区分を10.9までとし、ベーキング処理を行うということを徹底することで基本的には問題ありません。もしどうしても12.9以上の強度のものに防錆処理をしたい場合はジオメットなどの水素脆性の起こらない処理方法もありますのでお気軽にご相談くださいませ。ご拝読いただきましてありがとうございました!