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みなさん、ブエノスディアス!メキシコにいる阪神ネジの山里です。メキシコに来て早くも7ヶ月が経ちました。毎日タコス食べて走りまくってお客様のところに行ってねじの営業をさせていただいています!
今日はメキシコでもめちゃくちゃたくさん使われているアイボルトについて勉強になったことがあるので書きたいと思います。少しでもみなさまのモノづくりのお役に立てたら嬉しく思います。
あるお客様にて、下記のような質問をいただきました。
「昔から疑問だったんだけど、アイボルトの締め付けってしっかり締め付けたらいいの?」
ねじ屋として大変情けないことに答えられませんでした。アイボルトは、六角ボルトなどのように締結することが目的ではなく金型や設備を吊るために使います。2個のアイボルトで吊るときなどは、その2個のアイボルトは同じ向きになっていなければなりません。ということは、六角ボルトなどのようにトルク管理してしまうと、アイボルトの方向があちこち向くので違うというのは容易に想像できますが、では締め方の正解は何か?というのが答えられませんでした。
そこで、アイボルトメーカーの静香産業株式会社の山本社長にお伺いさせていただきました。回答は、
1.アイボルトは工具などで無理に締め付けてはいけない。過度な締め付けはトルク破壊を起こし、吊り上げる際に破断する恐れがある。
2.アイボルト座面と対象物の面は必ず密着させる。
3.2個のアイボルトのリングの向きは同一平面上において同一方向にしなければならない。同一方向になるように座面を削るか、座金などを使ってでも調整してください。
ということです。
詳しくは静香産業様のウェブサイトにも書いてありますので是非ご参考にしてください
http://www.shizuka-eyebolt.co.jp/eyebolt-precautions.html
静香産業様ウエブサイト アイボルト・アイナットの使用上の注意
アイボルトの締め方を勉強して感じたことは、アイボルトは超重要保安部品なのだということです。とにかく「折れて事故があってはならない」もので、そのために取り扱いのルールが決められ、熱間型打鍛造で成形され、材質・作り方も工夫されているということです。
例えば、座面同士を密着させる目的は、吊り上げようとしたときに少しでも隙間があるとそこに傾きの力がねじ部やヌスミの部分に力が掛かり、破損の恐れが出てきます。また、2個のボルトを同じ向きにしなければならないのは、同じ向きでないと吊り上げた時にボルトが緩む方向に回転してしまう可能性が出てきます。緩むと前述のことと同じことになるということです。
また横吊りは現在のJIS規格に記述がありません。よって、日本国内のメーカーは原則、禁止とアナウンスしています。理由は、アイボルトはねじの軸方向に引っ張られることを想定して設計されているからです。アイボルトを金型の横につけて吊ると剪断方向に引っ張られることになり、少しの荷重で折れて大きな事故に繋がる可能性があるので基本的に禁止されています。強度的には垂直吊りの約1/3程度に落ちます。横吊りについては現在、静香産業が主となりアイボルトJIS改訂版に注意事項として記載を検討中だそうです。
アイボルトは基本的にいわゆるSS400などの普通鋼で作られています。重たいものを吊るんだから合金鋼や炭素鋼を使って焼き入れなどをして強くしたらどうか?とも思うのですがそれは逆にダメなんです。
理由は、アイボルトがへたってきていることが目視で、確認出来るようにするためです。もし焼き入れ鋼を使うとへたっていても目視では確認出来ず、急に破損する可能性があり大事故になるからです。
静香産業様も高強度アイボルトとしてS45Cのものはあるが焼きならしを施し組織を整えているだけで、焼き入れはしていないのはその為なんです。
(過荷重によるアイボルトが変形することにより使用者に危険を促すことが必要)
余談ですが、アイボルトのSUS304品も流通してますがSUS304はJIS規格に材質指定はありません。アイボルトは基本的に鍛造で作られますがステンレスの鋳物製が一部市場で販売されています。鋳造品は脆くとても危険ですので注意が必要です。
長文読んでいただきましてありがとうございました!もし何かアイボルトやその他ねじのことでお困りのことがございましたらお気軽にお問い合わせください。